恐らく最初は蘆屋をめざして逃げ出したのが、途中で路が分らなくなって、戻って来たのではないであろうか。
僅か三里か四里のところを、三日もかかってうろうろしながら、とうとう目的地へ行き着けないで引っ返して来るとは、リリーにしては余り意気地がないようだけれども、事に依るとこの可哀そうな獣は、もうそれほどに老衰しているのであろう。
気だけは昔に変らないつもりで、逃げてみたことはみたものの、視力だの、記憶力だの、嗅覚だのと云うものが、もはや昔の半分もの働きもしてくれないので、どっちの路を、どっちの方角から、どう云う風に連れて来られたのか見当が付かず、彼方へ行っては踏み迷い、此方へ行っては踏み迷いして、又もとの場所へ戻って来る。