さてこの場合、品子がこの猫の身柄について福子に嫌味な手紙を出したり、塚本を通してあんなに執拗く頼んだりした動機と云うものを、一寸説明しておかなければならないのであるが、正直のところ、そこにはいたずらや意地悪の興味が手伝っていたことも確かであり、又庄造が猫に釣られて訪ねて来るかも知れないと云う万一の望みもあったであろうが、そんな眼の前のことよりも、実はもっと遠い遠い先のこと、―――ま、早くて半年、おそくて一年か二年もすれば、多分福子と庄造の仲が無事に行く筈はないのだからと、その時を見越しているのであった。
それと云うのが、もともと塚本の仲人口に乗せられて嫁に行ったのが不覚だったので、今更あんな怠け者の、意気地なしの、働きのない男なんぞに、捨てられた方が仕合わせだったかも知れないのだが、でも彼女としてどう考えても忌ま忌ましく、あきらめきれない気がするのは、当人同士が飽きも飽かれもした訳ではないのに、ハタの人間が小細工をして追い出したのだと、そう云う一念があるからだった。
尤もそんなことを云うと、いや、そう思うのはお前さんの己惚れだ、それは成る程、姑との折合も悪かったに違いないけれども、夫婦仲だってちっとも良いことはなかったではないか、お前さんは御亭主をのろまだと云って低能児扱いにするし、御亭主はお前さんを我が強いと云って鬱陶しがるし、いつも喧嘩ばかりしていたのを見ると、よくよく性が合わないのだ、もし御亭主がほんとにお前さんを好いているなら、いくらハタから押し付けたって、外に女を拵える訳がありますまいと、そう露骨には云わない迄も、塚本などのお腹の中は大概そうにきまっているのだが、それは庄造と云う人の性質を知らないからのことなので、彼女に云わせれば、いったいあの人はハタから強く押し付けられたら、否も応もないのである。