しかし、それなら、うすうすおりんなどのしていることを感付かないでもなかった時分に、何とか手段の施しようがあっただろうに、―――いよいよ蘆屋を追い出される間際にだって、もっと頑張ってみたらよかったろうに、―――じたいそう云う策略にかけては姑のおりんと好い取組だと云われた彼女が、案外あっさり旗を巻いて、おとなしく追ん出てしまったのはなぜであろうか、日頃の負けず嫌いにも似合わないと云うことになるが、そこにはやっぱり彼女らしい思わくがないでもなかった。
ありていに云うと、今度の事は彼女の方に最初幾分の油断があったからこうなったので、それと云うのも、あの多情者の、不良少女上りの福子を、何ぼ何でも忰の嫁にしようと迄はおりんも考えていないであろうし、又尻の軽い福子が、まさか辛抱する気もあるまいと、たかをくくっていたからなのだが、そこに多少の目算違いがあったとしても、どうせ長続きのする二人でないと云う見透しに、今も変りはないのであった。
尤も福子は年も若いし、男好きのする顔だちだし、鼻にかける程の学問はないが女学校へも一二年行っていたのだし、それに何より持参金が附いているのだから、庄造としては据え膳の箸を取らぬ筈はなく、先ず当分は有卦に入った気でいるだろうけれども、福子の方がやがて庄造では喰い足らなくなって、浮気をせずにはいないであろう。