彼女はいつも、上の学校を一二年でも覗いたことがあると云う福子に対して、教育の点では退け目を感じていたのであるが、でもほんとうの智慧くらべなら、福子にだっておりんにだって負けるものかと云う自負心があるので、リリーを預かると云う手段を思いついた時は、我ながらの妙案にひとりで感心してしまった。
なぜかといって、リリーさえ此方へ引き取って置いたら、恐らく庄造は雨につけ、風につけ、リリーのことを思い出す度に彼女のことを思い出し、リリーを不憫と思う心が、知らず識らず彼女を憐れむ心にもなろうからである。
そして、そうすれば、いつ迄たっても精神的に縁が切れない理窟であるし、そこへ持って来て福子との仲がシックリ行かないようになると、いよいよリリーが恋いしいと共に前の女房が恋いしくなろう。