品子は今迄、猫は愚か人間に対しても、こんなにこまやかな情愛を感じたこともなく、示したこともないような気がした。
それは一つには、おりんを始めいろいろな人から情の強い女だと云われていたものだから、いつか自分でもそう思わされていたせいであったが、この間からリリーのために捧げ尽した辛労と心づかいとを考える時、自分の何処にこんな暖かい、優しい情緒が潜んでいたのかと、今更驚かれるのであった。
そう云えば昔、庄造がこの猫の世話を決して他人の手に委ねず、毎日食事の心配をし、二三日置きにフンシの砂を海岸まで取り換えに行き、暇があると蚤を取ってやったりブラシをかけてやったりし、鼻が乾いていはしないか、便が軟か過ぎはしないか、毛が脱けはしないかと始終気をつけて、少しでも異状があれば薬を与えると云う風に、まめまめしく尽してやるのを見て、あの怠け者によくあんな面倒が見られることよと、ますます反感を募らしたものだが、あの庄造のしたことを今は自分がしているではないか。