さっき球撞きに行きたいと云ったのは、ほんとうにそのつもりだったのであるが、今の一件で急に胸がムシャクシャして来て、球なんかどうでもよくなったので、何と云うアテもなしに、ベルをやけに鳴らしながら蘆屋川沿いの遊歩道を真っすぐ新国道へ上ると、つい業平橋を渡って、ハンドルを神戸の方へ向けた。
まだ五時少し前頃であったが、一直線につづいている国道の向うに、早くも晩秋の太陽が沈みかけていて、太い帯になった横流れの西日が、殆ど路面と平行に射している中を、人だの車だのがみんな半面に紅い色を浴びて、恐ろしく長い影を曳きながら通る。
ちょうど真正面にその光線の方へ向って走っている庄造は、鋼鉄のようにぴかぴか光る舗装道路の眩しさを避けて、俯向き加減に、首を真横にしながら、森の公設市場前を過ぎ、小路の停留所へさしかかったが、ふと、電車線路の向う側の、とある病院の塀外に、畳屋の塚本が台を据えてせっせと畳を刺しているのが眼に留まると、急に元気づいたように乗り着けて行って、