なぜかと云って、抑もリリーを品子の方へ渡す時に、その後どう云う待遇を受けつつあるか、ときどき塚本が庄造の代りに見舞いに行って、様子を見届けて、報告をすると云う堅い約束があったのである。
勿論それは二人の間だけの申し合わせで、おりんや福子には絶対秘密になっていたのだが、しかしそう云う条件があったからこそ大事な猫を渡してやったのに、あれきり一度もその約束を実行してくれたことがなく、うまうま人をペテンにかけて、知らん顔をしているのであった。
だが、塚本は、空惚けている訳ではなくて、日頃の商売の忙しさに取り紛れてしまったのであろうか。