そして家の北側の、裏口の方へ廻って、空地の中へ這入り込むと、二三尺の高さに草がぼうぼうと生えている一とかたまりの叢のかげにしゃがんで、息を殺した。
ここでさっきのアンパンを咬りながら、二時間の間辛抱してみよう、そのうちにリリーが出て来てくれたら、お土産の鶏の肉を与えて、久しぶりに肩へ飛び着かせたり、口の端を舐めさせたり、楽しいいちゃつき合いをしようと、そう云う積りなのであった。
いったい今日は面白くないことがあったのでアテもなく外へ飛び出したら、足が自然に西の方へ向いたばかりでなく、塚本なんぞに出遭ったものだから、とうとう途中で決心をして、此処まで延してしまったのだが、こうなることと分っていたら外套を着て来ればよかったのに、厚司の下に毛糸のシャツを着込んだだけでは、流石に寒さが身に沁みる。