庄造は、母親からも女房からも自分が子供扱いにされ、一本立ちの出来ない低能児のように見做されるのが、非常に不服なのであるが、さればと云ってその不服を聴いてくれる友達もなく、悶々の情を胸の中に納めていると、何となく独りぽっちな、頼りない感じが湧いて来るので、そのために尚リリーを愛していたのである。
実際、品子にも、福子にも、母親にも分って貰えない淋しい気持を、あの哀愁に充ちたリリーの眼だけがほんとうに見抜いて、慰めてくれるように思い、又あの猫が心の奥に持っていながら、人間に向って云い現わす術を知らない畜生の悲しみと云うようなものを、自分だけは読み取ることが出来る気がしていたのであったが、それがお互いに別れ別れにされてしまって四十余日になるのである。
そして一時は、もうそのことを考えないように、なるべく早くあきらめるように努めたことも事実だけれども、母や女房への不平が溜って、その鬱憤の遣り場がなくなって来るに従い、いつか再び強い憧れが頭を擡げて、抑えきれなくなったのであった。