仕事が忙しいのなら已むを得ないが、ひょっとするとそうでなく、彼に心配させまいとして、何か隠しているのではないか。
たとえば品子にいじめられて、食うや食わずでいるためにひどく衰弱してしまったとか、逃げて出たきり行衛不明になったとか、病死したとか、云うようなことがあるのではないか。
あれから此方、庄造はよくそんな夢を見て、夜中にはっと眼を覚ますと、何処かで「ニャア」と啼いているように思えるので、便所へ行くような風をしながら、そうっと起きて雨戸を開けてみたことも、一度や二度ではないのであるが、あまりたびたびそう云う幻に欺かれると、今聞いた声や夢に見た姿は、リリーの幽霊なのではないか、逃げて来る路で野たれ死にをして、魂だけが戻ったのではないのかと、そんな気がして、ぞうっと身ぶるいが出たこともある。