だが又、いくら品子が意地の悪い女でも、塚本が無責任でも、まさかリリーに変ったことが起ったら黙っている筈もあるまいから、便りのないのは無事に暮らしている証拠なのだと、不吉な想像が浮かぶたびに打ち消し打ち消しして来たのであるが、それでも感心に女房の云いつけを忠実に守って、一度も六甲の方角へ足を向けたことがなかったと云うのは、監視が厳しかったばかりでなく、品子の網に引っかかるのが不愉快だからであった。
彼にはリリーを引き取った品子の真意と云うものが、今でもハッキリしないのだけれども、事に依ったら、塚本が報告を怠っているのも品子のさしがねではないのか、彼奴はそう云う風にしてわざと己に気を揉ませて、おびき寄せようと云う腹ではないのかと、そんな邪推もされるので、リリーの安否を確かめたいと願う一方、見す見す彼奴の罠に篏まってたまるものかと云う反感が、それと同じくらい強かったのであった。
彼は何とかしてリリーには会いたいが、品子に掴まることはイヤでたまらなかった。