「とうとうやって来ましたね」と、彼奴がへんに利口ぶって、得意の鼻をうごめかすかと思うと、もうその顔つきを浮かべただけでムシズが走った。
元来庄造には彼一流の狡さがあって、いかにも気の弱い、他人の云うなり次第になる人間のように見られているのを、巧みに利用するのであるが、品子を追い出したのが矢張その手で、表面はおりんや福子に操られた形であるけれども、その実誰よりも彼が一番彼女を嫌っていたかも知れない。
そして庄造は、今考えても、いいことをした、いい気味だったと思うばかりで、不憫と云う感じは少しも起らないのであった。