現に品子は、電燈のともっている二階のガラス窓の中にいるのに違いないのだが、雑草のかげにつくばいながらじっとその灯を見上げていると、又してもあの、人を小馬鹿にしたような、賢女振った顔が眼先にちらついて、胸糞が悪くなって来る。
折角ここまで来たのであるから、せめて「ニャア」と云うなつかしい声を余所ながらでも聞いて帰りたい、無事に飼われていることが分りさえしたら、それだけでも安心であるし、ここへ来た念が届くのであるから、いっそのことそうっと裏口を覗いてみたら、………アワよく行ったら、初子をこっそり呼び出して、おみやげの鶏の肉を渡して、近状を聞かして貰ったら、………と、そう思うのであるが、あの窓の灯を見て、あの顔を心に描くと、足がすくんでしまうのである。
うっかりそんな真似をしたら、初子がどう云う感違いをして、二階の姉を呼びに行かないものでもないし、少くとも後でしゃべることは確かであるから、「そろそろ計略が図に中って来た」などと、己惚れるだけでも癪に触る。