二階のガラス障子にでも、ほんの一瞬間でいいからさっと影が写ってくれたらどんなに嬉しいか知れないのに、ガラスの向うに白いカーテンが静かに垂れているばかりで、その上の方が薄暗く、下の方が明るくなっているのは、品子が電燈を低く下して、夜作をしているのであろう。
ふと庄造は、あかりの下で一心に針を運びつつある彼女の傍に、リリーがおとなしく背中を円めて、「の」の字なりに臥ころびながら、安らかな眠を貪っている平和な光景を眼前に浮かべた。
秋の夜長の、またたきもせぬ電燈の光が、リリーと彼女とただ二人だけを一つ圏の中に包んでいる外は、天井の方までぼうっと暗くなっている室内。