正直のところ、リリーが昔を忘れてしまって現状に満足していられても、矢張腹が立つであろうし、そうかと云って、虐待されていたり死んでいたりしたのでは尚悲しいし、孰方にしても気が晴れることはないのだから、いっそ何も聞かない方がいいかも知れない。
庄造は、途端に階下の柱時計が「ぼん、………」と、半を打つのを聞いた。
七時半だ、―――と思うと、彼は誰かに突き飛ばされたように腰を浮かしたが、二た足三足行ってから引っ返して来て、まだ大事そうに懐に入れていた筍の皮包を取り出すと、それを木戸口や、五味箱の上や、彼方此方へ持って行ってウロウロした。