それきり後がどうなったことやら分らなかったが、気が付いてみると、いつか自分は新国道のバスの停留所の前に来て、さっき床屋で受け取った釣銭の銀貨を、まだしっかりと手の中に握っていた。
ちょうどその日の午後一時頃、品子が朝のうちに仕上げた縫物を、近所まで届けて来ると云って、不断着の上に毛糸のショールを引っかけて、小走りに裏口から出て行ったあと、初子がひとり台所で働いていると、そこの障子をごそッと一尺ばかり開けて、せいせい息を切らしながら庄造が中を覗き込んだので、
「あらッ」
それきり後がどうなったことやら分らなかったが、気が付いてみると、いつか自分は新国道のバスの停留所の前に来て、さっき床屋で受け取った釣銭の銀貨を、まだしっかりと手の中に握っていた。
ちょうどその日の午後一時頃、品子が朝のうちに仕上げた縫物を、近所まで届けて来ると云って、不断着の上に毛糸のショールを引っかけて、小走りに裏口から出て行ったあと、初子がひとり台所で働いていると、そこの障子をごそッと一尺ばかり開けて、せいせい息を切らしながら庄造が中を覗き込んだので、
「あらッ」