―――そのために室内がもやもやと翳って、薄暗くなっている中に、信楽焼のナマコの火鉢が置いてあって、なつかしいリリーはその傍に、座布団を重ねて敷いて、前脚を腹の下へ折り込んで、背を円くしながらうつらうつら眼をつぶっていた。
案じた程に痩せてもいないし、毛なみもつやつやとしているのは、相当に優遇されているからであろう。
思ったよりも大事にされている証拠には、彼女のために専用の座布団が二枚も設けてあるばかりではない、たった今、お昼の御馳走に生卵を貰ったと見えて、きれいに食べ尽した御飯のお皿と、卵の殻とが、新聞紙に載せて部屋の片隅に寄せてあり、又その横には、蘆屋時代と同じようなフンシさえ置いてあるのである。