いったい彼女は何と思って、あんなに憎んでいた猫を大事にする気になったのであろう。
考えてみると庄造は、云わば自分の心がらから前の女房を追い出してしまい、この猫にまでも数々の苦労をかけるばかりか、今朝は自分が我が家の閾を跨ぐことが出来ないで、ついふらふらと此処へやって来たのであるが、このゴロゴロ云う音を聞きながら、咽せるようなフンシの匂を嗅いでいると、何となく胸が一杯になって、品子も、リリーも、可哀そうには違いないけれども、誰にもまして可哀そうなのは自分ではないか、自分こそほんとうの宿なしではないかと、そう思われて来るのであった。
と、その時ばたばたと足音がして、