健啖で、物を食う速力が非常に速い私は、大勢で鍋を囲んだりする時、まだよく煮え切らないうちに傍から傍から喰べてしまう癖があるのだが、衛生家で用心深い鏡花はそれと反対に、十分によく煮えたものでないと箸をつけない。
従って鏡花と私が鍋を囲むと、私が皆喰べてしまい、鏡花は喰べる暇がない。
たびたびその手を食わされた経験を持っている鏡花は、だから予め警戒して、「君、これは僕が喰べるんだからそのつもりで」と、鍋の中に仕切りを置くことにしているのだが、私は話に身が入ると、ついうっかりと仕切りを越えて平げてしまう。