時にはそんな風にして一時間以上もしゃべり続ける。
こっちから出かけて行くのは、どうせ原稿料の前借りをする時に決っていたが、或る時、多分借り越しが重なっていたのでもあろう、「ではこうして下さい」と、七子のかなり大型の両蓋の金時計を持って来て私に渡し、「麻田さん(当時の社長)にもそうたびたびはいいにくいから、これで一時都合して下さい」といったことがあった。
私は見え透いた細工をされているようで不愉快であったが、急場の必要に迫られているので、仕方なくそれを受け取って、その頃一高の近所にあった、学生時代から私の行きつけの質屋に持って行き、その時計(鎖附きであったかどうか忘れた)で六十円借りた。