今なら自家用車というところだが、樗陰はいつも人力車であった。
それも最初はお抱え俥ではなかったらしく、近所の車宿から雇っていたが、後には専用の車夫と車台を持っていた。
赭ら顔の、でっぷりと太った肥大漢の彼が、颯爽と風を切って本郷の大通りを走らせて行く風貌は、往来でも一と際目立ったので、「あ、樗陰だな」と、遠くから直ぐ分った。
今なら自家用車というところだが、樗陰はいつも人力車であった。
それも最初はお抱え俥ではなかったらしく、近所の車宿から雇っていたが、後には専用の車夫と車台を持っていた。
赭ら顔の、でっぷりと太った肥大漢の彼が、颯爽と風を切って本郷の大通りを走らせて行く風貌は、往来でも一と際目立ったので、「あ、樗陰だな」と、遠くから直ぐ分った。