たしかその時分、里見君が『時事新報』に「多情仏心」を連載し、私が『朝日新聞』に「肉塊」というものを連載中であったが、樗陰は「里見君のものに比較して君の作は甚しく見劣りがする、しっかりし給え」というのであった。
私を激励するつもりも多少あったかも知れないが、「どうも歯痒くて見ていられない、もう君なんぞに用はない」といった悪意も含まれているように聞えた。
こんな工合に、原稿の注文をしないだけでなく、積極的に、進んで喧嘩を売りに来るなんて編輯者は、樗陰の外には見たことがない。
たしかその時分、里見君が『時事新報』に「多情仏心」を連載し、私が『朝日新聞』に「肉塊」というものを連載中であったが、樗陰は「里見君のものに比較して君の作は甚しく見劣りがする、しっかりし給え」というのであった。
私を激励するつもりも多少あったかも知れないが、「どうも歯痒くて見ていられない、もう君なんぞに用はない」といった悪意も含まれているように聞えた。
こんな工合に、原稿の注文をしないだけでなく、積極的に、進んで喧嘩を売りに来るなんて編輯者は、樗陰の外には見たことがない。