つまり相手に腹を立てさせるのを目的にして漫罵を連ねているのである。
「あんなスキマだらけな乱暴な書き方をしないでも、もう少し書きようがあったではありませんか」と、或る時私が長江にいうと、「いや、議論を吹ッかける場合には、わざとスキマを拵えて置く方がいいんです、そうしないと敵が乗って来ないんです」といっていたが、なるほど評論家にはそういう心得が必要なのかなと、感心したことがあった。
若き日の武者君も黙っていない方だったからなかなか辛辣に応酬し、長江が「僕をからかうのは、五、六年おくれて僕の落し穴におっこったようなものだ」とか、長江を「ゼロ頭」だといい、「氏はこれから氏の頭のいい処を見せてくれるそうだから、黙って見ていようと思う。