あの病気の黴菌は、伝染力は極めて弱いものだけれども、鼻汁から感染しやすいものであるから、長江の行く床屋へ行かないようにする方がいい、長江の鼻毛を剃った剃刀で鼻毛を剃られたら危険である、ということで、われわれは長江の行きつけの床屋を調べたりしたことがあった。
長江はまた、わざとわれわれに馴れ近づいて、われわれが彼の病気をどの程度恐れているか、その度合いを試験して自ら快とするような傾向があった。
彼にしてみれば、これも「病気に負けてなるものか」という心理が働いていたのかも知れないが、彼がわれわれから嫌われたのは、そういう行為が重な原因であったと思う。