現にクリップンがそうであった。
あのように細君のわがままをおとなしく怺えた紳士が、恐ろしい罪を犯すはずはないという風に、一時は思われたのであった。
クリップンは最後まで自白しなかったので、彼がいかなる時と場合に、いかなる手段でコーラを殺したかは、遂に今日に至るまで知られていないが、ただ英国の法廷は、コーラが見えなくなったこと、地下室の床下から一箇の肉塊が現われたこと、クリップンが突然情婦を男装させて逃亡を企てたこと、彼が知り合いの薬種商から、性慾昂進剤として徐々に多量の劇薬を買い求めつつあったこと、及び肉塊の内臓にそれと同じ劇薬が含有されていたことなどから、コーラを毒殺したものとして彼に死刑の判決を与えた。