殊に線路から上の方、――山手の方は、その時分は至って淋しい場所であって、昔から村に居住している百姓以外には、去年の地震で関東を落ち延びた罹災民をあてこみの借家が、やっと二軒建っていたのみであった。
この二軒のうち一軒はまだ借り手がなく、他の一軒に、約二箇月程以前から小栗由次郎が住んでいた。
前記のB家はそこから四五間東寄りにあって、小栗の住宅に最も近かったのである。
殊に線路から上の方、――山手の方は、その時分は至って淋しい場所であって、昔から村に居住している百姓以外には、去年の地震で関東を落ち延びた罹災民をあてこみの借家が、やっと二軒建っていたのみであった。
この二軒のうち一軒はまだ借り手がなく、他の一軒に、約二箇月程以前から小栗由次郎が住んでいた。
前記のB家はそこから四五間東寄りにあって、小栗の住宅に最も近かったのである。