というのは、最初村の人たちは、亭主がやきもち焼きなので、細君をいじめているのであろうと想像していたのに、だんだん様子を探ってみると、怒鳴りつけたり殴ったりするのは細君の方で、亭主はあべこべにひいひい泣きながら、赦しを乞うているのであった。
さてこそ「あの女はヒステリーだ、何ぼ女優でも変だと思ったが、やっぱり幾らか気がおかしいんだ」というような噂が、ぱっとひろまってしまったのである。
そういう訳だから、その晩前記のB家の主人は、その犬の声や物音を聞いても、別に気にかけるはずはなく、「またやっているな」と思っただけで、すぐに寝入ってしまったのだが、それから三時間ばかり過ぎた明け方の五時近く、主人が再び眼を覚ますと、隣家の物音は微かながらもまだ続いていた。