さてこそ「あの女はヒステリーだ、何ぼ女優でも変だと思ったが、やっぱり幾らか気がおかしいんだ」というような噂が、ぱっとひろまってしまったのである。
そういう訳だから、その晩前記のB家の主人は、その犬の声や物音を聞いても、別に気にかけるはずはなく、「またやっているな」と思っただけで、すぐに寝入ってしまったのだが、それから三時間ばかり過ぎた明け方の五時近く、主人が再び眼を覚ますと、隣家の物音は微かながらもまだ続いていた。
しかし今度は、犬の吼えるのは聞えないで、多分亭主が例のひいひい悲鳴を挙げているのであろう、「堪忍してくれエ!