と云うのは千枝子夫婦が、中央停車場を立った時に、夫婦の荷を運んだ赤帽が、もう動き出した汽車の窓へ、挨拶のつもりか顔を出した。
その顔を一目見ると、夫は急に変な顔をしたが、やがて半ば恥かしそうに、こう云う話をし出したそうだ。
――夫がマルセイユに上陸中、何人かの同僚と一しょに、あるカッフェへ行っていると、突然日本人の赤帽が一人、卓子の側へ歩み寄って、馴々しく近状を尋ねかけた。
と云うのは千枝子夫婦が、中央停車場を立った時に、夫婦の荷を運んだ赤帽が、もう動き出した汽車の窓へ、挨拶のつもりか顔を出した。
その顔を一目見ると、夫は急に変な顔をしたが、やがて半ば恥かしそうに、こう云う話をし出したそうだ。
――夫がマルセイユに上陸中、何人かの同僚と一しょに、あるカッフェへ行っていると、突然日本人の赤帽が一人、卓子の側へ歩み寄って、馴々しく近状を尋ねかけた。