ではマルセイユで見かけたのは、その赤帽かと思いもしたが、余り怪談じみているし、一つには名誉の遠征中も、細君の事ばかり思っているかと、嘲られそうな気がしたから、今日まではやはり黙っていた。
が、今顔を出した赤帽を見たら、マルセイユのカッフェにはいって来た男と、眉毛一つ違っていない。
――夫はそう話し終ってから、しばらくは口を噤んでいたが、やがて不安そうに声を低くすると、「しかし妙じゃないか?
ではマルセイユで見かけたのは、その赤帽かと思いもしたが、余り怪談じみているし、一つには名誉の遠征中も、細君の事ばかり思っているかと、嘲られそうな気がしたから、今日まではやはり黙っていた。
が、今顔を出した赤帽を見たら、マルセイユのカッフェにはいって来た男と、眉毛一つ違っていない。
――夫はそう話し終ってから、しばらくは口を噤んでいたが、やがて不安そうに声を低くすると、「しかし妙じゃないか?