しかしまだその外に何か理由があるとしたら、それは金花が子供の時から、壁の上の十字架が示す通り、歿くなつた母親に教へられた、羅馬加特力教の信仰をずつと持ち続けてゐるからであつた。
――さう云へば今年の春、上海の競馬を見物かたがた、南部支那の風光を探りに来た、若い日本の旅行家が、金花の部屋に物好きな一夜を明かした事があつた。
その時彼は葉巻を啣へて、洋服の膝に軽々と小さな金花を抱いてゐたが、ふと壁の上の十字架を見ると、不審らしい顔をしながら、
しかしまだその外に何か理由があるとしたら、それは金花が子供の時から、壁の上の十字架が示す通り、歿くなつた母親に教へられた、羅馬加特力教の信仰をずつと持ち続けてゐるからであつた。
――さう云へば今年の春、上海の競馬を見物かたがた、南部支那の風光を探りに来た、若い日本の旅行家が、金花の部屋に物好きな一夜を明かした事があつた。
その時彼は葉巻を啣へて、洋服の膝に軽々と小さな金花を抱いてゐたが、ふと壁の上の十字架を見ると、不審らしい顔をしながら、