金花はまるで喪心したやうに、翡翠の耳環の下がつた頭をぐつたりと後へ仰向けた儘、しかし蒼白い頬の底には、鮮な血の色を仄めかせて、鼻の先に迫つた彼の顔へ、恍惚としたうす眼を注いでゐた。
この不思議な外国人に、彼女の体を自由にさせるか、それとも病を移さない為に、彼の接吻を刎ねつけるか、そんな思慮をめぐらす余裕は、勿論何処にも見当らなかつた。
金花は髯だらけな客の口に、彼女の口を任せながら、唯燃えるやうな恋愛の歓喜が、始めて知つた恋愛の歓喜が、激しく彼女の胸もとへ、突き上げて来るのを知るばかりであつた。