ではお君さんは誰に心を寄せているかと云うと――幸お君さんは壁の上のベエトオフェンを眺めたまま、しばらくは身動きもしそうはないから、その間におれは大急ぎで、ちょいとこの光栄ある恋愛の相手を紹介しよう。
お君さんの相手は田中君と云って、無名の――まあ芸術家である。
何故かと云うと田中君は、詩も作る、ヴァイオリンも弾く、油絵の具も使う、役者も勤める、歌骨牌も巧い、薩摩琵琶も出来ると云う才人だから、どれが本職でどれが道楽だか、鑑定の出来るものは一人もいない。
ではお君さんは誰に心を寄せているかと云うと――幸お君さんは壁の上のベエトオフェンを眺めたまま、しばらくは身動きもしそうはないから、その間におれは大急ぎで、ちょいとこの光栄ある恋愛の相手を紹介しよう。
お君さんの相手は田中君と云って、無名の――まあ芸術家である。
何故かと云うと田中君は、詩も作る、ヴァイオリンも弾く、油絵の具も使う、役者も勤める、歌骨牌も巧い、薩摩琵琶も出来ると云う才人だから、どれが本職でどれが道楽だか、鑑定の出来るものは一人もいない。