埃風の吹く往来には、黒い鍔広の帽子をかぶって、縞の荒い半オオヴァの襟を立てた田中君が、洋銀の握りのある細い杖をかいこみながら、孤影悄然として立っている。
田中君の想像には、さっきからこの町のはずれにある、格子戸造の家が浮んでいた。
軒に松の家と云う電燈の出た、沓脱ぎの石が濡れている、安普請らしい二階家である、が、こうした往来に立っていると、その小ぢんまりした二階家の影が、妙にだんだん薄くなってしまう。
埃風の吹く往来には、黒い鍔広の帽子をかぶって、縞の荒い半オオヴァの襟を立てた田中君が、洋銀の握りのある細い杖をかいこみながら、孤影悄然として立っている。
田中君の想像には、さっきからこの町のはずれにある、格子戸造の家が浮んでいた。
軒に松の家と云う電燈の出た、沓脱ぎの石が濡れている、安普請らしい二階家である、が、こうした往来に立っていると、その小ぢんまりした二階家の影が、妙にだんだん薄くなってしまう。