小弁慶の浴衣を着た男は、受けた盃をぐいとやると、その手ですぐに口の端の滴を払つて、自ら嘲るやうに眉を動かしたが、
「今から見りや、三年前は、まるでこの世の極楽さね。
ねえ、親分、お前さんが江戸を御売んなすつた時分にや、盗つ人にせえあの鼠小僧のやうな、石川五右衛門とは行かねえまでも、ちつとは睨みの利いた野郎があつたものぢやごぜえませんか。
小弁慶の浴衣を着た男は、受けた盃をぐいとやると、その手ですぐに口の端の滴を払つて、自ら嘲るやうに眉を動かしたが、
「今から見りや、三年前は、まるでこの世の極楽さね。
ねえ、親分、お前さんが江戸を御売んなすつた時分にや、盗つ人にせえあの鼠小僧のやうな、石川五右衛門とは行かねえまでも、ちつとは睨みの利いた野郎があつたものぢやごぜえませんか。