丁度今から三年前、おれが盆茣蓙の上の達て引きから、江戸を売つた時の事だ。
東海道にやちつと差しがあつて、路は悪いが甲州街道を身延まで出にやなら無えから、忘れもし無え、極月の十一日、四谷の荒木町を振り出しに、とうとう旅鴉に身をやつしたが、なりは手前も知つてた通り、結城紬の二枚重ねに一本独銛の博多の帯、道中差をぶつこんでの、革色の半合羽に菅笠をかぶつてゐたと思ひねえ。
元より振分けの行李の外にや、道づれも無え独り旅だ。
丁度今から三年前、おれが盆茣蓙の上の達て引きから、江戸を売つた時の事だ。
東海道にやちつと差しがあつて、路は悪いが甲州街道を身延まで出にやなら無えから、忘れもし無え、極月の十一日、四谷の荒木町を振り出しに、とうとう旅鴉に身をやつしたが、なりは手前も知つてた通り、結城紬の二枚重ねに一本独銛の博多の帯、道中差をぶつこんでの、革色の半合羽に菅笠をかぶつてゐたと思ひねえ。
元より振分けの行李の外にや、道づれも無え独り旅だ。