府中の宿をはづれると、堅気らしい若え男が、後からおれに追ひついて、口まめに話しかけやがる。
見りや紺の合羽に菅笠は、こりや御定りの旅仕度だが、色の褪めた唐桟の風呂敷包を頸へかけの、洗ひざらした木綿縞に剥げつちよろけの小倉の帯、右の小鬢に禿があつて、顋の悪くしやくれたのせえ、よしんば風にや吹かれ無えでも、懐の寒むさうな御人体だ。
だがの、見かけよりや人は好いと見えて、親切さうに道中の名所古蹟なんぞを教へてくれる。
府中の宿をはづれると、堅気らしい若え男が、後からおれに追ひついて、口まめに話しかけやがる。
見りや紺の合羽に菅笠は、こりや御定りの旅仕度だが、色の褪めた唐桟の風呂敷包を頸へかけの、洗ひざらした木綿縞に剥げつちよろけの小倉の帯、右の小鬢に禿があつて、顋の悪くしやくれたのせえ、よしんば風にや吹かれ無えでも、懐の寒むさうな御人体だ。
だがの、見かけよりや人は好いと見えて、親切さうに道中の名所古蹟なんぞを教へてくれる。