するとあの意気地なしめ、無理無体に夜具の下から、面だけ外へ出したと思ふと、「ひ、ひ、人殺し」と、烏骨鶏が時でもつくりやしめえし、奇体な声を立てやがつた。
手前が盗みをして置きながら、手前で人を呼びや世話は無え、唐変木とは始めから知つちやゐるが、さりとは男らしくも無え野郎だと、おれは急に腹が立つたから、其処にあつた枕をひつ掴んで、ぽかぽかその面をぶちのめしたぢや無えか。
さあ、その騒ぎが聞えての、隣近所の客も眼をさましや、宿の亭主や奉公人も、何事が起つたと云ふ顔色で、手燭の火を先立ちに、どかどか二階へ上つて来やがつた。