と申し、私のみならず、私下男足下にも、手をつき候うて、頻に頼み入り候へども、人力にては如何とも致し難き儀に候へば、心得違ひ致さざる様、呉れ呉れも、申し諭し、煎薬三貼差し置き候上、折からの雨止みを幸、立ち帰らんと致し候所、篠、私袂にすがりつき候うて離れ申さず、何やら申さんとする気色にて、唇を動かし候へども、一言も申し果てざる中に、見る見る面色変り、忽、其場に悶絶致し候。
然れば、私大に仰天致し、早速下男共々、介抱仕り候所、漸、正気づき候へども、最早立上り候気力も無之、「所詮は、私心浅く候儘、娘一命、泥烏須如来、二つながら失ひしに極まり候。
とて、さめざめと泣き沈み、種々申し慰め候へども、一向耳に掛くる体も御座無く、且は娘容態も詮無く相見え候間、止むを得ず再下男召し伴れ、匇々帰宅仕り候。