彼は新しい妻と共に、静な朝夕を送り始めた。
風の声も浪の水沫も、或は夜空の星の光も今は再彼を誘つて、広漠とした太古の天地に、さまよはせる事は出来なくなつた。
既に父とならうとしてゐた彼は、この宮の太い棟木の下に、――赤と白とに狩の図を描いた、彼の部屋の四壁の内に、高天原の国が与へなかつた炉辺の幸福を見出したのであつた。
彼は新しい妻と共に、静な朝夕を送り始めた。
風の声も浪の水沫も、或は夜空の星の光も今は再彼を誘つて、広漠とした太古の天地に、さまよはせる事は出来なくなつた。
既に父とならうとしてゐた彼は、この宮の太い棟木の下に、――赤と白とに狩の図を描いた、彼の部屋の四壁の内に、高天原の国が与へなかつた炉辺の幸福を見出したのであつた。