吾妻橋から川下ならば、駒形、並木、蔵前、代地、柳橋、あるいは多田の薬師前、うめ堀、横網の川岸――どこでもよい。
これらの町々を通る人の耳には、日をうけた土蔵の白壁と白壁との間から、格子戸づくりの薄暗い家と家との間から、あるいは銀茶色の芽をふいた、柳とアカシアとの並樹の間から、磨いたガラス板のように、青く光る大川の水は、その、冷やかな潮のにおいとともに、昔ながら南へ流れる、なつかしいひびきをつたえてくれるだろう。
ああ、その水の声のなつかしさ、つぶやくように、すねるように、舌うつように、草の汁をしぼった青い水は、日も夜も同じように、両岸の石崖を洗ってゆく。