十六夜清心が身をなげた時にも、源之丞が鳥追姿のおこよを見そめた時にも、あるいはまた、鋳掛屋松五郎が蝙蝠の飛びかう夏の夕ぐれに、天秤をにないながら両国の橋を通った時にも、大川は今のごとく、船宿の桟橋に、岸の青蘆に、猪牙船の船腹にものういささやきをくり返していたのである。
ことにこの水の音をなつかしく聞くことのできるのは、渡し船の中であろう。
自分の記憶に誤りがないならば、吾妻橋から新大橋までの間に、もとは五つの渡しがあった。
十六夜清心が身をなげた時にも、源之丞が鳥追姿のおこよを見そめた時にも、あるいはまた、鋳掛屋松五郎が蝙蝠の飛びかう夏の夕ぐれに、天秤をにないながら両国の橋を通った時にも、大川は今のごとく、船宿の桟橋に、岸の青蘆に、猪牙船の船腹にものういささやきをくり返していたのである。
ことにこの水の音をなつかしく聞くことのできるのは、渡し船の中であろう。
自分の記憶に誤りがないならば、吾妻橋から新大橋までの間に、もとは五つの渡しがあった。