ある地方の高等学校へ、去年の秋入学した兄、――彼よりも色の黒い、彼よりも肥った兄の顔が、彼には今も頭のどこかに、ありあり浮んで見えるような気がした。
「ハハワルシ、スグカエレ」――彼は始こう書いたが、すぐにまた紙を裂いて、「ハハビョウキ、スグカエレ」と書き直した。
それでも「ワルシ」と書いた事が、何か不吉な前兆のように、頭にこびりついて離れなかった。
ある地方の高等学校へ、去年の秋入学した兄、――彼よりも色の黒い、彼よりも肥った兄の顔が、彼には今も頭のどこかに、ありあり浮んで見えるような気がした。
「ハハワルシ、スグカエレ」――彼は始こう書いたが、すぐにまた紙を裂いて、「ハハビョウキ、スグカエレ」と書き直した。
それでも「ワルシ」と書いた事が、何か不吉な前兆のように、頭にこびりついて離れなかった。