――尤も今日は、刻限が遲いせいか、一羽も見えない。
唯、所々、崩れかゝつた、さうしてその崩れ目に長い草のはへた石段の上に、鴉の糞が、點々と白くこびりついてゐるのが見える。
下人は七段ある石段の一番上の段に洗ひざらした紺の襖の尻を据ゑて、右の頬に出來た、大きな面皰を氣にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めてゐるのである。
――尤も今日は、刻限が遲いせいか、一羽も見えない。
唯、所々、崩れかゝつた、さうしてその崩れ目に長い草のはへた石段の上に、鴉の糞が、點々と白くこびりついてゐるのが見える。
下人は七段ある石段の一番上の段に洗ひざらした紺の襖の尻を据ゑて、右の頬に出來た、大きな面皰を氣にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めてゐるのである。