――いや、この老婆に對すると云つては、語弊があるかも知れない。
寧、あらゆる惡に對する反感が、一分毎に強さを増して來たのである。
この時、誰かがこの下人に、さつき門の下でこの男が考へてゐた、饑死をするか盗人になるかと云ふ問題を、改めて持出したら、恐らく下人は、何の未練もなく、饑死を選んだ事であらう。
――いや、この老婆に對すると云つては、語弊があるかも知れない。
寧、あらゆる惡に對する反感が、一分毎に強さを増して來たのである。
この時、誰かがこの下人に、さつき門の下でこの男が考へてゐた、饑死をするか盗人になるかと云ふ問題を、改めて持出したら、恐らく下人は、何の未練もなく、饑死を選んだ事であらう。