だからようやく独唱が終って、けたたましい拍手の音が起った時、彼はわずかにほっとした眼を挙げて、まるで救いを求めるように隣席の大井を振返った。
すると大井はプログラムを丸く巻いて、それを望遠鏡のように眼へ当てながら、演壇の上に頭を下げているシュウマンの独唱家を覗いていたが、
「成程、清水と云う男は、立派に色魔たるべき人相を具えているな。
だからようやく独唱が終って、けたたましい拍手の音が起った時、彼はわずかにほっとした眼を挙げて、まるで救いを求めるように隣席の大井を振返った。
すると大井はプログラムを丸く巻いて、それを望遠鏡のように眼へ当てながら、演壇の上に頭を下げているシュウマンの独唱家を覗いていたが、
「成程、清水と云う男は、立派に色魔たるべき人相を具えているな。