須田町の乗換で辰子と分れた俊助は、一時間の後この下宿の二階で、窓際の西洋机の前へ据えた輪転椅子に腰を下しながら、漫然と金口の煙草を啣えていた。
彼の前には読みかけた書物が、象牙の紙切小刀を挟んだまま、さっきからちゃんと開いてあった。
が、今の彼には、その頁に詰まっている思想を咀嚼するだけの根気がなかった。
須田町の乗換で辰子と分れた俊助は、一時間の後この下宿の二階で、窓際の西洋机の前へ据えた輪転椅子に腰を下しながら、漫然と金口の煙草を啣えていた。
彼の前には読みかけた書物が、象牙の紙切小刀を挟んだまま、さっきからちゃんと開いてあった。
が、今の彼には、その頁に詰まっている思想を咀嚼するだけの根気がなかった。