そこで万年筆へインクを吸わせながら、いささか腰を擡げ兼ねていると、哲学概論を担当している、有名なL教授が、黒い鞄を小脇に抱えて、のそのそ外からはいって来てしまった。
L教授は哲学者と云うよりも、むしろ実業家らしい風采を備えていた。
それがその日のように、流行の茶の背広を一着して、金の指環をはめた手を動かしながら、鞄の中の草稿を取り出したりなどしていると、殊に講壇よりは事務机の後に立たせて見たいような心もちがした。
そこで万年筆へインクを吸わせながら、いささか腰を擡げ兼ねていると、哲学概論を担当している、有名なL教授が、黒い鞄を小脇に抱えて、のそのそ外からはいって来てしまった。
L教授は哲学者と云うよりも、むしろ実業家らしい風采を備えていた。
それがその日のように、流行の茶の背広を一着して、金の指環をはめた手を動かしながら、鞄の中の草稿を取り出したりなどしていると、殊に講壇よりは事務机の後に立たせて見たいような心もちがした。