室咲きの薔薇、窓からさす日の光、かすかなピアノの響、伏目になった辰子の姿――ポオト・ワインに暖められた心には、そう云う快い所が、代る代る浮んだり消えたりした。
が、やがて給仕女が一人、紅茶を持って来たのに気がついて、何気なく眼を林檎から離すと、ちょうど入口の硝子戸が開いた所で、しかもその入口には、黒いマントを着た大井篤夫が、燈火の多い外の夜から、のっそりはいって来る所だった。
「おい。
室咲きの薔薇、窓からさす日の光、かすかなピアノの響、伏目になった辰子の姿――ポオト・ワインに暖められた心には、そう云う快い所が、代る代る浮んだり消えたりした。
が、やがて給仕女が一人、紅茶を持って来たのに気がついて、何気なく眼を林檎から離すと、ちょうど入口の硝子戸が開いた所で、しかもその入口には、黒いマントを着た大井篤夫が、燈火の多い外の夜から、のっそりはいって来る所だった。
「おい。