ただ、黄昏と共に身辺を去来して、そが珊瑚の念珠と、象牙に似たる手頸とを、えもならず美しき幻の如く眺めしのみ。
もしわれにして、汝ら沙門の恐るる如き、兇険無道の悪魔ならんか、夫人は必ず汝の前に懺悔の涙をそそがんより、速に不義の快楽に耽って、堕獄の業因を成就せん」と。
われ、「るしへる」の弁舌、爽なるに驚きて、はかばかしく答もなさず、茫然としてただ、その黒檀の如く、つややかなる面を目戍り居しに、彼、たちまちわが肩を抱いて、悲しげに囁きけるは、「わが常に「いんへるの」に堕さんと思う魂は、同じくまた、わが常に「いんへるの」に堕すまじと思う魂なり。